◆ 自治会と法律
「地域の親睦団体である自治会は、法律とは無縁だ!」と思われている方も多いと思いますが、好き嫌いに関係なく実生活と法律が切り離せないように、自治会も法律に無縁ではありません。
自治会費の払方や返還請求でもめて、最高裁判所の判断を求める場合も有るのです。法律は、自分の身を守るためにも出来るだけ理解した方が良いと思います。
■ 法律上の自治会の位置
先ず、法律上の自治会・町内会の位置づけを、考えて見ましょう。
法律上は、自治会は任意団体(権利能力無き社団)です。
自治会への入会も(会則で規制してない限り)退会も自由です。自治会に加入しないと「ゴミ出しが出来ない」と言う問題も有るかとは思いますが、基本は「自治会への入会は自由」なのです。
法的根拠は、最高裁の判例を参照下さい。
■ 自治会の法人化
自治会は任意団体と述べましたが、1991年(平成3年)4月の地方自治法改正(260条の2)により一定の要件を満たし市区町村長の認可を受ければ、法人格を取得出来るようになり、不動産登記の登記名義人となる事が出来る制度(認可地縁団体制度)が導入されました。
■■ 地方自治法改正の背景
自治会員が自分の土地や建物を自治会に提供していたり、町村合併等により建物を引き継ぎ自治会館としている場合、(任意団体である)自治会名で建物・土地の登記が出来ないので、過去には会長や役員名で登記されていました。そのため、役員交代時の移転登記が不十分であったり、登記者が死亡した時に個人財産とされたりと、問題が多かったようです。また課税上も問題が多かったようです。
■■ 法人格取得の要件
地方自治法では、法人格取得の場合、次の4つの要件が満たされる事が必要です。
● その区域の住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理等良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行う事を目的とし、現にその活動を行っていると認められること。
● その区域が、住民にとって客観的に明らかなものとして定められていること。
● その区域に住所を有する全ての個人は、構成員となる事が出来るものとし、その相当数の者が現に構成員になっていること。
● 規約を定めていること。
■ 自治会と法律
自治会を運営する場合、関連法令に従うのは当然ですが、募金徴収の手間や募金徴収の目標額達成等を実現するため安易な方法をとっている場合が有ります。また、法的な問題を全く意識していない自治会が多いと言うのも実態と言えます。
自治会会則に「政治的、宗教的活動をしない」と規定している自治会が多いと思います。通常は、「ややこしい問題は、自治会に持ち込まない方が良い」と簡単に考えていますが、政治活動、宗教活動を禁止しているのは良く考えると憲法xx条「宗教の自由、政治の自由」に抵触するからですね。XX神社への奉賛金を自治会から支出すると、強制的に会員全員にXX神社へ奉賛したことになると見做されます。
■ 裁判の判例
裁判所で示された判例を、提示して見ます。
■■ 最高裁第3小法廷 2005年4月26日判決
埼玉県営住宅本田第二団地(新座市)の自治会からの退会を巡る裁判で、最高裁第三小法廷は、「自治会は強制加入団体ではなく、退会は自由である」と言う判断を示した。
このケースでは、建物の管理に使われる管理費(共益費)に自治会費が含まれていたため、共益費の支払いが命じられました。
町内会費を内包する管理組合費の支払いを巡って争われた東京簡易裁判所の判決では、「町内会費相当分の徴収をマンション管理組合の規則等で定めても、その拘束力は無い」と言う判断が、平成19年8月7日示されています。
■■ 最高裁第1小法廷 2008年4月3日判決
滋賀県甲賀市の希望ヶ丘自治会が、自治会費に赤十字募金や共同募金への寄付分を上乗せして徴収する事を決議した事を巡って争われた裁判で、最高裁は自治会の上告を退け、「自治会費への寄付金分上乗せは、寄付を強制するもので無効」とした大阪高裁の判決が確定した。