◆ 自治会の法人化 (2016.2.10新設)

■ 認可地縁団体とは?

自治会・町内会は、「任意団体」即ち「権利能力無き社団」と説明しましたが、平成3年(1991年)の地方自治法改正により一定の条件を満たせば、市町村長の認可を受けて法人格を取得できるようになり、自治会館等の不動産を自治会・町内会の名義で不動産登記が出来るようになりました。市町村長の認可を受けて法人格を取得した自治会・町内会を、「認可地縁団体」と言います(認可地縁団体制度)。

■ 自治会を法人化する必要性 (2016.3.2更新)

自治会・町内会が、XX自治会館とかXX公会堂を所有しているのを各地で見ます。マンションのモデルハウスが提供されたケースとか、大地主や商店主が気前良く自治会に建物を提供したりとか、無償提供された土地にボランティアで自治会館を建てた場合等が有ります。

問題は、XX自治会が建物を実質所有出来ても肝心の「XX自治会を不動産登記の名義人とする」事が出来ない事です! 仕方なく「自治会長の個人名義で自治会館を不動産登記する」ことになります。固定資産税が会長個人に掛かるのは当然ですが、会長が急死したりすると自治会館は妻と子供の相続資産に算入されてしまいます。相続人が優しい人たちで素直に自治会に返却することに同意しても、名義変更登記料とか税務上の問題(贈与税)とか多いと思います。また、不動産登記した会長が誤解して「自治会館(特にモデルハウスの場合など)は、自分の物になった」と思ったりすると、後が大変です。このような事態は、自治会を法人化でき不動産登記の名義人になれれば回避出来ます!

■ 認可地縁団体の4つの認可要件 (2016.3.3更新)

地縁団体である自治会が、市町村長の認可を得て法人格を得るには、次の4要件を満たす必要が有ります。

  1. 自治会の存在する地域の住民相互の連絡、環境整備、集会施設の維持・管理等良好な地域社会の維持・形成を目的として、実際にその活動を行っている事。
  2. 自治会の区域が、住民にとって客観的に明らかで、自治会が相当の期間にわたり存続している事。
  3. 自治会区域の全住民(個人)が構成員と成れる旨が規約(会則)に定められており、実際相当数の住民が構成員になっている事。
  4. 規約(会則)を定めている事。規約には、次の事項が定められている事。
    ①名称
    ②目的
    ③区域
    ④主たる事務所の所在地
    ⑤構成員の資格に関する事項
    ⑥代表者に関する事項
    ⑦会議に関する事項
    ⑧資産に関する事項

これらの要件は、「資産に関する事項」を除けば、普通の自治会であれば備わっている事項だと思います。通常自治会では、担当区域を「XX神社門前東地区」とか「二本松地域」等と表現していることが多いですが、認可申請には不適切なように思われます。やはり住居表示(XX1丁目~2丁目の区域、等)による規定にした方が適切と思われます。また、これら要件は、自治会名義で自治会館等の登記が出来るようにするためのものですから、当然の項目と思われます。従って、PTA父母会、和太鼓の会、少年野球団等は、会員資格に各種制約(年齢、技能等)を設けているため、ここで言う「認可地縁団体」には該当しません。

■ 認可地縁団体としての会則 (2016.3.3更新)

通常の自治会の会則と認可地縁団体の会則は、どこが違うのでしょうか? その点を考察して見ましょう。

  1. 資産の構成、管理、処分
  2. 規約の変更(規約の変更が、市町村長の認可が必要であることを明記する)
  3. 解散
  4. 残余財産の処分
  5. 備え付け帳簿

「認可地縁団体の会則」には、地方自治法に規定された事項が有るため、上記の項目が必要になります。不動産登記が法人化の目的ですから、対象不動産とその管理方法、処分方法等を会則に明記(あるいは財産目録の存在を明記)する必要が有ります。また、会の解散についての規約はあまり会則に有りませんが、会の解散についても地方自治法に規定が有るため、それに沿った条文を明記する必要が有ります。また、帳簿の備え付けについても単に「会計帳簿を備え付ける」程度の規定を設けているのが普通ですが、認可地縁団体の場合は認可や登記書類が有るので、より具体的詳細に規定する必要が有ります。当然、第3者からの閲覧にも耐えられるようにしておくことが望ましいと思われます。

■ 自治会が「認可地縁団体」として認可されたら? (2016.3.2新設)

自治体として法人格を得たならば、唯一の目的である「自治会名義で、自治会館、土地等を登記」します。法務局へ行き、会長の個人名義で登記されている不動産の所有権移転登記(登記の原因=委任の終了)を行います。

■ 認可地縁団体の維持 (2016.3.2更新)

市町村長に認可された自治会は、次の市町村長の告示事項(①~⑨)に変更が有った場合には、変更が有った事を証明する資料と共に所定の届出書(様式5:告示事項変更届出書)を市町村長に届出る事となっています。

■■ 告示事項変更届書の項目

①会の名称
②規約に定める目的
③区域
④主たる事務所
⑤代表者(自治会長)の氏名及び住所
⑥裁判所による代表者の職務執行の停止の有無並びに職務代行者の選任の有無
⑦代理人の有無
⑧規約に解散の事由を定めたときは、その事由
⑨認可年月日等

上記項目では、年度毎に変更される可能性が有るのは、「⑤代表者の住所・氏名」だと思われます。この場合、告示事項変更届出書に総会議事録を添付して申請することになります。


認可地縁団体(自治会)の規約を変更する場合にも、代表者(自治会長の住所・氏名)名による規約変更認可申請書(様式4)を市町村長に提出し、認可を受ける必要が有ります。

■■ 規約変更認可申請書の項目

①規約変更内容及び理由
②規約変更を総会で議決したことを証明する書類(総会議事録)

■ 任意団体の法人化の問題点 (2016.3.2新設)

自治会を法人化する場合の最大の問題点は、「会員の構成」に在ると思います。地方自治法第260条2項3号には下記のように会員の構成を明記して有ります。

「その区域に住所を有するすべての個人は、構成員となることができるものとし、その相当数の者が現に構成員となっていること」

通常自治会・町内会等は、その地域に住む「世帯を会員の単位」としています。その世帯が、何人家族であれ1会員として加入・議決権を有していると言うのが通常です。上記の条文をそのまま解釈すると「家族1人1人が会員となる」となり、自治会は家族構成(それも正確に氏名)を正確に把握し、子供を含めた運営をしないといけなくなります。500世帯(会員)と思ったら、2000人の会員が居ることに成ったりします。会員は個人となると、自治会連合会等も本当は、認可地縁団体に成れないことになります。実態は、幾つかの自治会に所属する商店街で資金を出し合って自治会館を所有している場合など「自治会連合会として認可地縁団体」となっています。地方自治法が、実態に合っていないという事だと思います。